クラウドPBXとは?工事不要の仕組みと向かない会社
クラウドPBXは、会社の電話をまとめる機械(主装置)をインターネットの向こう側に置く仕組みです。ビジネスフォンとの違い、工事がいらない理由、料金の見方、050と03・052の番号の決まり、向いていない会社まで、総務省の資料と公式料金で解説します。

この記事の目次
この記事でわかること
- クラウドPBXの仕組み
- 必要なものと、使える番号
- 向かない会社と料金の比べ方
クラウドPBXとは
クラウドPBXとは、会社の電話をまとめる機械(PBX)の役目を、インターネットの向こう側のサーバーで行う仕組みです。
事務所に機械を置かず、電話線の配線工事もせずに、パソコンやスマホで会社の番号を使って電話を受けたりかけたりできます。
この記事では、ビジネスフォンとの違い、料金の見方、番号の決まり、そしてクラウドPBXが向いていない会社まで説明します。料金は2026年10月30日に各社の公式ページで確認したものです。
そもそもPBXとは
PBX(Private Branch eXchange)は、会社の中の電話交換機です。次のようなことをしています。
- 外からかかってきた電話(外線)を、社内の電話機に振り分ける
- 社内の電話機どうしで話す(内線)
- 受けた電話を別の人に回す(転送・保留)
いわゆる「ビジネスフォン」は、このPBX(小さいものは「主装置」と呼ばれます)と、それにつながった電話機のセットです。
NTT西日本は、PBXを「レガシーPBX」「IP-PBX」「クラウドPBX」の3つに分けて説明しています(出典:NTT西日本 PBXとは)。
ビジネスフォンとクラウドPBXの違い
| ビジネスフォン(主装置) | クラウドPBX | |
|---|---|---|
| PBXがある場所 | 事務所の中 | インターネットの向こう側(サーバー) |
| 必要な工事 | 電話線の配線、主装置の設置 | いらない(インターネットがあればよい) |
| 電話をとる機械 | 専用の電話機 | パソコン、スマホ、IP電話機 |
| どこで電話を取れるか | 事務所の電話機の前だけ | インターネットがつながる場所ならどこでも |
| 人が増えたとき | 電話機を買い足し、配線する | アカウント(ID)を足す |
| 移転・レイアウト変更 | 配線のやり直しが必要 | 配線がないので、そのまま |
| 費用の払い方 | 機械の購入・リースと保守 | 月額(ID・番号・回線ごと)と通話料 |
いちばん大きな違いは、電話線の工事がいらないことと、パソコンがあればどこでも会社の電話を取れることです。
クラウドPBXでできること
- 会社の番号で、パソコンやスマホから受けてかける:自宅にいても、相手には会社の番号が表示されます。
- 在宅や外出中でも代表電話を取れる:受付の人が在宅の日も、休日の当番も、同じ番号のままです。
- 内線・転送・保留:ビジネスフォンと同じように、社内で電話を回せます。
- 人が増えても、配線をやり直さない:アカウントを足すだけです。
- 音声メニュー(IVR)や録音:サービスによってはオプションで付けられます。音声メニューについては IVR(電話の自動音声応答)とは にまとめています。
工事がいらない代わりに、必要なもの
「工事不要」は、次のものがそろっている前提の話です。
- 安定したインターネット回線:電話の声もインターネットで運びます。光回線などがおすすめです。
- パソコンとヘッドセット(またはスマホ):電話機の代わりになります。
- 番号に合った拠点:03・052などの番号を使う場合は、その地域に事務所が必要です(くわしくは後述)。
番号は3種類:050・03や052(0AB-J)・0120
クラウドPBXで使える番号は、大きく3種類です。
| 番号 | 特徴 | 決まり |
|---|---|---|
| 050 | IP電話の番号。地域に関係なく使える | 取りやすい |
| 03・052・06など(0AB-J) | ふつうの固定電話と同じ市外局番 | その地域に拠点が必要 |
| 0120・0800 | フリーダイヤル。受ける側が通話料を払う | 着信の通話料がかかる |
「0AB-J」は、市外局番から始まる10桁の固定電話番号のことです。各桁を0・A・B・C…J と呼ぶことから来ています。
03・052の番号は、その地域の拠点が必要です
総務省の資料では、クラウドPBXのような形で0AB-J番号を使う場合、その番号の地域の中に、契約者の拠点(住所)が実際にあることを確認するよう求めています。条件を満たせない場合は、050番号などを使うこととされています(出典:総務省 答申資料 2018年11月)。
つまり、名古屋に事務所がないのに052の番号を取ることはできません。 バーチャルオフィスや貸し会議室の住所では取得できないサービスが多いので、申し込む前に確認してください。
なお「どこでも電話が取れる」のは、電話を受ける場所の話です。番号を取るための拠点は、その地域に必要です。
050と0AB-Jは、音質の基準も違います
総務省の研究会の報告書では、0AB-JのIP電話と050のIP電話で、求められる品質の基準が違います(出典:総務省 0AB-J IP電話の品質要件の在り方に関する研究会 報告書)。
| 0AB-J IP電話 | 050 IP電話 | |
|---|---|---|
| 音質の目安(R値) | 80を超える | 50を超える |
| 声の遅れ(平均) | 150ミリ秒未満 | 400ミリ秒未満 |
| 緊急通報(110・119) | 求められる | 基準なし |
050は取りやすい代わりに、基準がゆるやかです。お客様に名刺で渡す代表番号を何にするかは、この違いも含めて選びましょう。番号ごとの取り方と費用は 会社の電話番号の取り方|050・03(0ABJ)・0120の違い にまとめています。
クラウドPBXの料金の見方
クラウドPBXの料金は、何に対してお金がかかるか(課金の単位)がサービスごとに違います。 主な公式料金を並べます(2026年10月30日時点)。
| サービス | 課金の単位 | 公式の料金 | 税 |
|---|---|---|---|
| MOT/TEL | 契約ごとの定額 | スタンダード:初期29,800円〜、月5,980円(内線20まで) | 税抜 |
| ひかりクラウドPBX(NTT東日本) | IDのまとまり(パック) | 10IDパック 月11,000円 | 税込 |
| Dialpad | 1ユーザーごと | Standard 月1,000円、Pro 1,500円 | 記載なし |
| 03plus | 1台(1ID・1番号)ごと | 月1,280円、初期5,000円 | 税抜 |
| ナイセンクラウド | 契約ごと+番号ごと | ライト月2,000円(1内線)、050番号 月300円、初期10,000円 | 税抜 |
表のとおり、「月1,000円」と「月5,980円」は、単位が違うのでそのままでは比べられません。自社の人数と番号の数を当てはめて、月の合計で比べてください。
月額のほかにかかるもの
- 通話料:かけた分だけかかります。携帯電話あては固定電話あてより高いのがふつうです。
- 番号の月額:050・0AB-J・0120で金額が違います。
- 初期費用:設定や番号の発行。
- 機器:ヘッドセット、IP電話機(使う場合)。
月額の比べ方は コールセンターシステムの料金比較 でもくわしく説明しています。
クラウドPBXの注意点(デメリット)
1. インターネットが止まると、電話も止まる
声をインターネットで運ぶので、回線が不安定だと声が途切れたり、遅れたりします。停電やネットの障害のときの連絡手段(携帯電話など)を決めておきましょう。
2. 110・119にかけられない場合がある
総務省の資料では、050のIP電話は緊急通報について「基準なし」です。また、クラウドPBXのように電話を転送する形では緊急通報を不可にすることとされています(出典:総務省 答申資料 2018年11月)。緊急通報は固定電話か携帯電話からかける前提で考えましょう。
3. 番号の地域の決まりがある
前に書いたとおり、03・052などは、その地域に拠点が必要です。
4. いまの番号を引き継げるとは限らない
2025年1月から、固定電話の番号を別の会社へ持っていける「番号ポータビリティ」が広がりました。ただし、移る先の設備で扱える番号帯が違う場合など、例外があります(出典:総務省 固定電話の番号ポータビリティ)。いまの番号をそのまま使いたい場合は、申し込み前に必ず確認してください。
クラウドPBXが向いていない会社
正直に書くと、次のような場合はクラウドPBXに替えないほうがよいことがあります。
- インターネット回線が不安定な場所で電話をすることが多い
- パソコンを使わない現場の仕事が中心で、電話機で受けるほうが早い
- FAXが仕事の中心になっている
- 緊急通報をその電話からかける必要がある(店舗・施設など)
- ビジネスフォンを買ったばかりで、リースや償却が残っている
反対に、開業・移転・ビジネスフォンのリース満了のタイミング、在宅勤務や外出中にも代表電話を取りたい会社には向いています。
導入までの流れ
- 使う番号を決める(050・03や052・0120のどれか。いまの番号を引き継ぐか)
- 人数と、同時に話す数を数える
- 見積もりをとって、月の合計で比べる
- ネット回線・パソコン・ヘッドセットを用意する
- 番号の手続き(拠点の確認、本人確認など)
- 設定して使い始める
よくある質問
Q. クラウドPBXとビジネスフォンの違いは何ですか?
A. ビジネスフォンは事務所に主装置を置いて配線しますが、クラウドPBXは主装置の役目をインターネットの向こう側のサーバーで行います。そのため配線工事がいらず、パソコンやスマホでどこでも会社の電話を取れます。
Q. クラウドPBXの導入に工事は必要ですか?
A. 電話線の配線工事や主装置の設置工事はいりません。安定したインターネット回線と、パソコン・ヘッドセット(またはスマホ)があれば始められます。
Q. クラウドPBXの月額はいくらですか?
A. サービスによって課金の単位が違います。公式の料金では、1ユーザー月1,000円から、契約ごとの定額で月5,980円などがあります。番号の月額と通話料が別にかかるので、人数と番号の数を当てはめた月の合計で比べてください。
Q. 自宅でも会社の番号で電話を受けられますか?
A. 受けられます。インターネットとパソコン(またはスマホ)があれば、事務所の外でも会社の番号にかかってきた電話を取れます。ただし03・052などの番号を取るには、その地域に事務所が必要です。
Q. クラウドPBXで110や119にかけられますか?
A. かけられない場合があります。総務省の資料では050のIP電話は緊急通報の基準がなく、電話を転送する形のサービスでは緊急通報を不可にすることとされています。緊急通報は固定電話か携帯電話からかけてください。
Q. いまの電話番号をそのまま使えますか?
A. 番号の種類と、移る先のサービスによります。2025年1月から番号ポータビリティが広がりましたが、例外もあるため申し込み前に確認が必要です。
まとめ
- クラウドPBXは、会社の電話をまとめる機械(PBX)をインターネットの向こう側に置く仕組み
- 電話線の工事がいらず、パソコンがあればどこでも会社の電話を取れる
- 必要なのは、安定したインターネット回線とパソコン・ヘッドセット
- 番号は050・0AB-J(03・052など)・0120の3種類。0AB-Jはその地域に拠点が必要
- 料金は課金の単位がばらばら。人数と番号を当てはめた月の合計で比べる
- ネットが不安定、FAX中心、緊急通報が必要な現場には向かない
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