携帯回線が使えるCTI比較|対応製品は実質4つだけ
090/080の携帯回線で発着信できるCTIシステムを比較。20製品を調べて公式に対応を明記していたのは2製品のみでした。IP回線との違い、通話料の定額化、応答率の問題まで解説します。
「スマホ対応CTI」には2種類ある
CTIシステムの比較サイトを見ると、多くの製品に「スマホ対応」と書いてあります。ところがこの表記の中身は、まったく異なる2つの仕組みを指しています。
| ソフトフォン型 | 携帯回線型 | |
|---|---|---|
| 仕組み | スマホアプリ上でIP電話を動かす | スマートフォンの携帯回線そのもので発着信する |
| 使う回線 | インターネット(IP回線) | 携帯回線(090/080/070) |
| 相手に表示される番号 | 会社の固定番号や050番号 | 携帯番号 |
| 通話料 | IP回線の従量課金 | キャリアのかけ放題を適用できる |
| 通信環境の影響 | Wi-Fi/モバイルデータの品質に左右される | 音声通話網を使うため安定している |
| 対応製品数 | 多い | 極めて少ない |
「スマホで使える」という言葉は両方に当てはまります。しかし通話料の構造も、相手に表示される番号も、通話品質も違います。資料の表記だけで判断せず、必ず確認してください。
この記事で扱うのは後者、携帯回線型です。
携帯回線に対応したCTIは実質4製品しかない
国内の主要なCTI・テレアポシステム20製品について、公式サイトを一次情報として調査しました(2026年9月時点)。結果は以下のとおりです。
公式サイトで明確に対応を確認できた製品:2つ
| 製品 | 提供会社 | 対応内容 |
|---|---|---|
| Comdesk Lead | 株式会社Widsley | IP回線と携帯回線の併用を最大の売りとして公式に明記。090/080/070での発信に対応。料金は携帯回線プラン6,000円〜/ID、IP回線プラン4,980円〜/ID、両回線プラン13,980円〜/ID |
| MiiTel Phone | 株式会社RevComm | 「3大キャリアの090・080・070から始まる携帯電話番号での発着信に対応」と公式トップに明記。月額4,980〜7,980円/ID |
二次情報で対応を確認できた製品:1つ
| 製品 | 提供会社 | 対応内容 |
|---|---|---|
| アポ放題 | モズエンタープライズ株式会社 | スマートフォンの携帯回線で架電する仕組み。キャリアのかけ放題プランを使うことで通話料を固定できる。月額7,800円+5アカウントごとにサーバー代2,000円(いずれも比較メディア掲載情報) |
別サービス/FMC方式で対応:1つ
| 製品 | 提供会社 | 対応内容 |
|---|---|---|
| BIZTELモバイル(BIZTELコールセンター本体とは別サービス) | 株式会社リンク | キャリアFMCタイプで docomo/au/SoftBank の法人契約回線に対応。ライト:初期60,000円+月額30,000円、スタンダード:初期330,000円+月額100,000円。端末ごとに初期1,000円+月額300〜900円 |
残り16製品の状況
非対応と判断できるもの:Zoom Phone(BYOCはあるが090/080発信は対象外)、Zendesk Talk、Amazon Connect、BIZTELコールセンター本体
公式・二次情報とも記載がなく不明:lisnavi(旧List Navigator.)、CT-e1/SaaS、SimpleConnect、InfiniTalk、Omnia LINK、MediaCalls、UPSELL CLOUD、Sakura、OSORA、OSHIRASE、Dream Call Next、GoodCall、MOT/TEL
MOT/TELはスマホを内線化するアプリを提供していますが、携帯回線そのものでの発信対応は公式サイトで確認できませんでした。
つまり、「携帯回線で発信できるCTI」という条件だけで、選択肢は20分の2〜4に絞られます。
なぜ携帯回線対応の製品が少ないのか
理由は技術的なものです。
一般的なクラウドCTIは、**音声をインターネット経由でやり取りする(VoIP)**前提で設計されています。提供事業者のサーバから電話網に接続するため、番号も事業者が用意した固定番号や050番号になります。この構成であれば、利用者はブラウザを開くだけで使えます。
一方、携帯回線で発信するには、実際の携帯電話(またはSIM)を、システムと物理的・論理的に接続する必要があります。方式は主に3つです。
| 方式 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| スマホアプリ方式 | スマートフォンにアプリを入れ、アプリが発信を制御。通話は携帯回線 | 端末台数分のスマホが必要 |
| ゲートウェイ方式 | SIMを挿した装置をサーバ側に置き、そこから発信 | オペレーターはPCだけでよい |
| キャリアFMC方式 | キャリアが提供する法人向けサービスで、携帯を内線に組み込む | キャリアとの法人契約が前提 |
いずれも、クラウドだけで完結せず、回線と端末の手配が必要になります。これが対応製品の少なさの理由です。
携帯回線を使う3つの利点
利点1:通話料を定額化できる
これが最大の理由です。
CTIの費用は「初期費用+月額基本料+席数課金+通話料」の4階建てですが、発信量の多い業務では通話料が最も重くなります。
参考として、通話料の単価を公開している製品の数字を挙げます。
| 宛先 | 単価の例 |
|---|---|
| 固定電話宛 | 8円/3分 |
| 携帯電話宛 | 18円/1分 |
携帯宛が1分18円という前提で試算するとこうなります。
| 条件 | 月間通話時間 | 通話料(概算) |
|---|---|---|
| 1人・1日2時間・20営業日 | 40時間 | 約43,200円 |
| 5人・1日2時間・20営業日 | 200時間 | 約216,000円 |
| 10人・1日3時間・20営業日 | 600時間 | 約648,000円 |
10人規模だと、システム利用料(6,000円×10人=60,000円)の10倍以上が通話料です。
携帯回線でキャリアのかけ放題プランを使えば、この部分が固定費になります。架電数が増えても通話料は変わりません。月末に請求額を見るまで通信費が読めない、という状態から抜けられます。
利点2:応答率が上がる
通話料と同じくらい重要なのが、こちらです。
近年、固定番号や050番号からの着信は、相手の端末に届く前に弾かれることが増えています。
- スマートフォンOSの通話スクリーニング機能
- キャリアの迷惑電話対策サービス(自動でブロック、または警告表示)
- 端末にプリインストールされた迷惑電話フィルタアプリ
- ユーザーが自分で入れている着信拒否アプリ
これらは「知らない固定番号・050番号」を高い確率で警告対象にします。かけているつもりでも、相手の画面に着信すら表示されていないことがあります。
携帯番号(090/080)からの発信であれば、こうしたフィルタに引っかかりにくくなります。相手にとっては「知らない携帯番号」ですが、少なくとも着信は表示されます。
通話スクリーニングの仕組みと対策は 携帯回線が使えるCTIの比較 で詳しく扱っています。
利点3:外出先でも同じ環境が使える
携帯回線型は、スマートフォンがあればどこでも同じ番号で発着信できます。
- 訪問の移動中に折り返しができる
- 通話履歴と録音がオフィスにいるときと同じようにシステムに残る
- 在宅勤務でもオフィスと同じ運用ができる
「外で個人のスマホからかけた通話だけ記録が残らない」という穴がなくなるのが実務上の価値です。営業活動の可視化を進めるなら、ここが抜けていると分析が成立しません。
携帯回線型を選ぶときの注意点
利点だけではありません。導入前に必ず確認すべきことがあります。
注意1:かけ放題プランの利用規約を確認する
これが最も重要です。
携帯キャリアのかけ放題プランには、約款上「通常の利用の範囲を超える場合」に利用を制限できる旨の条項があるのが一般的です。業務での大量発信は、この条項に触れる可能性があります。
- 個人契約のかけ放題を業務に使ってよいか
- 法人契約の場合、どの程度の発信量までが「通常の範囲」か
- 制限がかかった場合、どうなるのか(速度制限か、通話停止か)
必ず事前に、キャリアまたはサービス提供元に確認してください。 ここを曖昧にしたまま導入し、後から回線を止められると、業務が完全に停止します。
サービス提供元に「かけ放題を前提とした運用実績があるか」「制限がかかった事例はあるか」を直接聞くのが確実です。
注意2:端末とSIMの手配・管理コスト
携帯回線型は、端末またはSIMが必要です。
| 項目 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 端末の調達 | 提供元がレンタルするのか、自社で用意するのか |
| SIMの契約 | 提供元が用意するのか、自社でキャリア契約するのか |
| 台数の考え方 | 1人1台か、複数人で共有できるか |
| 端末管理 | 紛失時の対応、退職時の回収と初期化 |
| BYOD(私物端末利用) | 認めるかどうか、認める場合の費用精算ルール |
システム利用料が安く見えても、端末代と回線基本料を足すと総額が変わります。見積時に含めてもらってください。
注意3:セキュリティと情報管理
スマートフォンで顧客情報にアクセスするため、端末紛失時のリスクがあります。
- リモートワイプ(遠隔でのデータ消去)に対応しているか
- 端末にデータが残る設計か、都度サーバから取得する設計か
- 退職時のアカウント削除とデータ削除の手順
- 通話録音データの保存場所とアクセス権限
特に退職時の手順は、契約前に確認してください。 元従業員のスマートフォンに顧客リストが残る、という事故は実際に起きています。
注意4:電波状況
携帯回線は音声通話網を使うためIP電話より安定していますが、電波が届かない場所では使えません。オフィスの立地によっては、特定のキャリアだけ電波が弱いということもあります。
導入前に、実際に使う場所で、実際に使うキャリアの電波状況を確認してください。トライアル時に必ず試すべき項目です。
注意5:番号の扱い
携帯番号で発信すると、相手には携帯番号が表示されます。
- 相手からの折り返しはその携帯番号にかかってくる
- 担当者が変わったとき、番号をどう引き継ぐか
- 会社の代表番号での受電はどうするか
発信は携帯、受電は固定番号という運用にするのか、両方を携帯で受けるのか。運用設計を先に決めてください。IP回線と携帯回線を併用できる製品は、この使い分けができます。
携帯回線型が向いている会社・向いていない会社
向いている
- 1人あたりの発信量が多い(1日30件以上、通話時間が長い)
- 通話料が月額システム利用料を上回っている
- リストが個人の携帯番号中心(通話単価が高い)
- 応答率の低下に悩んでいる
- 外出の多い営業が電話をかける
- 在宅勤務・多拠点で運用したい
向いていない
- 受電が中心の業務(問い合わせ窓口、カスタマーサポート)
- 代表番号・フリーダイヤルでの着信が必須
- 発信量が少ない(月の通話料が数万円以下)
- 端末管理の運用体制を作れない
- セキュリティポリシー上、スマートフォンでの顧客情報閲覧が認められていない
受電中心の業務にはIP回線型のほうが適しています。 IVR、ACD、待ち呼管理といった機能が充実しているのはそちらです。
選定時のチェックリスト
携帯回線型を検討する際に、提供元へ確認すべき項目をまとめます。
回線について
- 携帯回線での発信に対応しているか(ソフトフォン型ではないか)
- かけ放題プランを適用できるか
- かけ放題の範囲(時間・回数の制限の有無)
- キャリアの利用規約上、業務利用に問題がないか
- IP回線との併用ができるか
費用について
- システム利用料(1IDあたりか、基本料込みか)
- 初期費用
- 端末代・レンタル料
- 回線基本料(誰が契約するか)
- 上記をすべて含めた「10人・1年」の総額
機能について
- 通話録音(保存期間・容量・追加料金)
- 文字起こし・AI解析の有無
- リスト管理(重複排除、NGリスト、再架電)
- CRM/SFA連携(方式と費用)
- レポート・分析
運用について
- 端末紛失時の対応手順
- 退職時のデータ削除手順
- 電波が弱い場所での代替手段
- 導入までの期間
- サポートの対応時間
- 最低契約期間と解約時のデータエクスポート
よくある質問
Q. CTIシステムはスマホでも使えますか?
A. 使えます。ただし「スマホアプリでIP電話を動かすタイプ」と「携帯回線そのもので発着信するタイプ」があり、通話料の構造も相手に表示される番号も異なります。資料の「スマホ対応」表記だけで判断せず、どちらか確認してください。
Q. 携帯回線が使えるCTIはどれですか?
A. 2026年9月時点で、公式サイトで携帯回線対応を明記しているのは Comdesk Lead と MiiTel の2製品です。このほかアポ放題がスマートフォンの携帯回線を使う仕組み、BIZTELモバイルがキャリアFMC方式で法人契約回線に対応しています。
Q. 携帯回線を使うと通話料はどれくらい下がりますか?
A. かけ放題プランを適用できれば、通話料は定額になります。従量課金で月20万円かかっていた5人規模のチームなら、かけ放題の月額(回線数分)に置き換わります。削減率は現在の通話量によって変わるため、直近3ヶ月の通話明細をもとに試算してください。
Q. 会社の固定電話番号は使えなくなりますか?
A. 製品によります。IP回線と携帯回線を併用できる製品なら、発信は携帯番号、受電は固定番号という使い分けができます。携帯回線専用の製品の場合は、固定番号での受電は別の仕組みが必要です。
Q. 個人のスマートフォンでも使えますか(BYOD)?
A. 技術的には可能な製品がありますが、運用上は推奨されません。退職時のデータ削除、通信費の精算、プライベートとの混在といった問題が発生します。業務用端末を用意するのが基本です。
Q. 電波状況が悪い場所ではどうなりますか?
A. 携帯回線が圏外では発着信できません。IP回線を併用できる製品であれば、Wi-Fi環境下でIP回線に切り替えるという運用が可能です。導入前に、実際に使う場所で電波状況を確認してください。
Q. 退職者が出たときのデータ削除はどう進めればよいですか?
A. 製品ごとに手順が異なります。一般的には、①管理画面でアカウントを無効化、②端末上のアプリデータを削除(リモートワイプ対応製品なら遠隔で可能)、③端末の回収と初期化、という流れです。契約前にこの手順を確認し、社内の退職手続きに組み込んでおいてください。
Q. 導入までどのくらいかかりますか?
A. システム側の設定は数日で済みますが、端末とSIMの手配に時間がかかります。キャリアの法人契約から始める場合は2〜4週間を見込んでください。
Q. 携帯番号からかけると、相手に警戒されませんか?
A. 知らない番号である点は固定番号と変わりません。ただし、携帯番号は迷惑電話フィルタでブロックされる可能性が固定番号・050番号より低く、少なくとも着信が表示される確率が高くなります。かかってこない電話は成約しないため、まず着信することが前提です。
まとめ
- 「スマホ対応CTI」にはソフトフォン型と携帯回線型の2種類があり、中身がまったく違う
- 主要20製品を調査し、携帯回線での発信に公式対応していたのは2製品のみ。実質的な選択肢は4つ
- 携帯回線を使う利点は3つ。通話料の定額化、応答率の改善、外出先での一元管理
- 最大の注意点はかけ放題プランの利用規約。業務利用の可否を必ず事前確認する
- 端末・SIMの手配、退職時のデータ削除手順、電波状況の確認を導入前に済ませる
- 受電中心の業務にはIP回線型のほうが適している。用途で選び分ける